本サイトの記事内に広告が含まれる場合があります。 業界の仕組み 軽貨物のリアル

軽貨物の存在で運送会社が人・車・配達リスクを減らす現実。

こんな方におすすめ

  • 軽貨物の仕事を始めようと考えている人
  • 車両費や燃料費を自分で負担している配達員
  • なぜ大手運送会社が委託ドライバーを使うのか知りたい人

軽貨物の仕事は、一般的に「車一台で始められる配送ビジネス」「個人でも独立できる仕事」「働いた分だけ稼げる仕事」として紹介されます。

会社員として雇われるのではなく、個人事業主として自分の判断で働く。配達件数を増やせば売上も増え、経験を積めば効率も上がる。

表面的には、自由度の高い働き方に見えます。

しかし、実際に現場へ入ると、その自由がかなり限定されていることに気づきます。

 

配達する荷物は自分で選べません。担当エリア、時間指定、再配達、端末の操作、荷物の返却方法なども、ほとんど決められています。

一方で、車両リース代、ガソリン代、保険、整備費、事故、交通違反、荷物が少ない日の売上減少は、配達員側が負担します。

仕事内容は会社の仕組みに強く組み込まれているのに、経費と責任は個人事業主として引き受ける。

 

私は約5か月間、山口県の田舎や山側を含む地域で軽貨物の仕事を経験し、この構造に強い疑問を持つようになりました。

なぜ、軽貨物という事業形態がここまで広がっているのでしょうか。

その理由は、配達員に自由な働き方を提供するためだけではないはずです。

荷主や運送会社が、車両、人件費、社会保険、事故、荷量変動などのリスクを自社の外へ移すため。そして、自社のセールスドライバーを単純な宅配業務から外し、営業、集荷、顧客管理など、会社にとってより利益を生みやすい仕事へ集中させるためではないでしょうか。

この記事では、軽貨物という事業が存在する背景を、配達員の努力や根性ではなく、荷主と運送会社にとっての都合から考えます。

荷物量は毎日変わるが、社員と車両の固定費は毎月発生する

 

運送会社にとって、すべての荷物を自社の社員と車両だけで配達することには、大きなリスクがあります。

荷物量は毎日一定ではありません。

曜日、季節、セール、天候、地域、繁忙期などによって大きく変化します。

年末や大型セールの時期には大量の荷物が集まっても、通常期には荷物が少なくなることがあります。

荷物が多い日に合わせて社員と車両を用意すれば、荷物が少ない日にも給与、社会保険料、車両費、駐車場代、整備費などが発生します。

社員は、荷物が少ないからといって、その日だけ給与を大幅に減らすことはできません。

会社が車両を所有していれば、使っていない日でも購入費やリース料、保険、税金、車検などの費用がかかります。

 

そこで便利なのが、個人事業主として働く軽貨物ドライバーです。

会社は、必要なときに必要な荷物を委託し、配達した個数や稼働日数に応じて報酬を支払えます。

荷物が少ない日は、配達員の売上が減ります。

荷物が多い日は、配達員へ多くの荷物を渡せます。

会社は荷量変動のリスクを、自社の固定費として抱える必要がありません。

一方、配達員側は荷物が少なくても、車両リース代や保険料を支払わなければなりません。

仕事を始めたばかりで十分な荷物を積めない日でも、固定費は発生します。

 

私自身も、新人の時期に荷物量が少なく、売上に対してガソリン代や車両費が重く感じられる時期がありました。

運送会社側から見れば、荷物が少ない日の損失を自社で抱えるのではなく、委託ドライバーの売上減少として処理できます。

つまり、軽貨物という仕組みは、荷物量の変動に柔軟に対応するための仕組みであると同時に、その変動リスクを配達員へ移す仕組みでもあります。

「頑張れば稼げる」という言葉の裏には、「荷物がなければ稼げない」という現実があります。

しかも、荷物があるかどうかを配達員が決めることはできません。

個人事業主でありながら、自分で仕事量を作ることができず、会社から渡される荷物に売上を左右される。

この時点で、一般的な独立事業とはかなり異なります。

会社は管理するが、車両・経費・事故の責任は配達員へ移せる

 

軽貨物ドライバーは個人事業主と呼ばれます。

個人事業主であれば、仕事の時間、価格、取引先、作業方法などを自分で決められるイメージがあります。

しかし、宅配現場では、配達員が自由に決められる範囲は限られています。

荷物を受け取る時間が決まっている。

担当エリアが決められる。

時間指定を守らなければならない。

指定された端末やアプリを使う。

不在や再配達の処理方法も決まっている。

 

荷物を配り終えた後は、持ち戻りを返却しなければならない。

仕事の進め方は、会社や荷主の仕組みに強く組み込まれています。

それにもかかわらず、車両は配達員が用意します。

ガソリン代、保険、タイヤ、オイル交換、修理費なども、配達員負担になることがあります。

事故を起こした場合や交通違反を受けた場合も、基本的には運転者本人の責任です。

会社は、配達方法や時間を実質的に管理しながら、仕事に必要な主要な設備とリスクを自社の外に置くことができます。

仮にすべての配達員を社員として雇い、会社所有の車両を使わせれば、会社は給与だけでなく、社会保険、労務管理、車両管理、安全管理、事故対応など、多くの責任を負わなければなりません。

 

業務委託であれば、それらの負担の一部を軽くできます。

もちろん、業務委託という働き方そのものが悪いわけではありません。

自分で仕事を選び、価格を決め、複数の取引先と契約し、自由に働けるのであれば、個人事業主としての利点があります。

しかし、実際には一つの会社や一つの現場へ強く依存し、仕事の内容を細かく決められ、断れば次の仕事に影響するような関係もあります。

その状態で「あなたは個人事業主だから、すべて自己責任です」と言われても、自由と責任のバランスが取れているとは言えません。

私が現場で感じたのも、この矛盾でした。

荷物、エリア、時間は自分で決められない。

 

しかし、配れなかった日の売上、燃料費、車両費、疲労、事故のリスクは自分で負担する。

運送会社にとって軽貨物は、必要な指示を出しながら、雇用によって発生する責任を減らせる仕組みになっています。

個人事業主という言葉が、働く人の自由を示すためではなく、会社側の責任を減らすために使われているのであれば、問題があります。

宅配を軽貨物へ任せれば、セールスドライバーを営業へ集中させられる

 

軽貨物が使われるもう一つの大きな理由は、運送会社が自社のセールスドライバーに、単純な宅配だけをさせたくないからではないでしょうか。

セールスドライバーという名前が示すとおり、本来その役割は、荷物を届けることだけではありません。

法人や店舗を訪問し、集荷を行う。

新しい荷物や契約を獲得する。

既存顧客との関係を維持する。

出荷量や配送方法について相談を受ける。

会社のサービスを案内する。

地域内の顧客情報を集める。

 

つまり、配達員であると同時に、営業担当者としての役割も持っています。

しかし、個人宅への荷物を大量に抱え、朝から夜まで宅配だけに追われていれば、営業活動をする時間はなくなります。

一件ずつ住宅を回り、不在票を入れ、再配達に対応し、時間指定を追いかけていれば、新しい顧客を探したり、法人へ営業したりする余裕はありません。

そこで、個人宅向けの宅配荷物を軽貨物ドライバーへ渡し、自社のセールスドライバーを集荷や営業へ集中させるという役割分担が生まれます。

運送会社にとっては、非常に合理的な方法です。

軽貨物ドライバーが、個人宅への細かい配達、不在、再配達、時間指定を担当する。

セールスドライバーは、法人集荷や大口顧客への対応を行い、会社の売上を増やす。

単純に荷物を届ける仕事を外部へ切り出し、自社社員には、より収益性の高い業務を担当させられます。

 

問題は、この役割分担によって、時間と手間のかかる宅配部分だけが、低単価で軽貨物へ押し出されやすいことです。

個人宅配は、一個あたりの荷物が小さくても、配達先が分散しています。

不在もあります。

時間指定もあります。

住所が分かりにくい家や、駐車場所がない場所もあります。

荷物一個の売上に対して、非常に多くの時間と手間がかかります。

反対に、法人集荷や大口顧客の対応では、一か所で複数の荷物を扱えることがあります。

継続的な契約につながれば、会社にとって安定した売上になります。

運送会社が自社社員をどちらへ優先的に配置したいかを考えれば、答えは分かりやすいでしょう。

利益につながりやすい営業や集荷は自社のセールスドライバーが担当し、細かく、時間がかかり、不在リスクの高い個人宅配は軽貨物へ任せる。

軽貨物は、荷物量の調整弁であるだけでなく、セールスドライバーを営業へ戻すための存在でもあるのです。

 

もちろん、会社が社員を適材適所へ配置すること自体は間違いではありません。

問題は、外部へ切り出された宅配業務に、仕事の難しさや経費に見合うだけの単価が支払われているかどうかです。

セールスドライバーを営業へ集中させることで会社の売上が増えるのであれば、その土台を支えている軽貨物ドライバーにも、十分な報酬が支払われるべきです。

軽貨物が宅配を引き受けるからこそ、セールスドライバーは営業や集荷に動けます。

それにもかかわらず、軽貨物を単なる安い配達要員として扱うのであれば、利益を生む仕事だけを会社が取り、時間とリスクの大きい部分を個人へ押し付けていることになります。

低単価でも人が集まる限り、荷主と運送会社は仕組みを変えない

 

軽貨物の個数単価が低くても、その仕事を引き受ける人がいれば、荷主や運送会社が単価を上げる理由は弱くなります。

会社側から見れば、荷物が予定どおり配られている限り、現在の仕組みは機能しています。

配達員が長時間働いていること。

休憩を取れないこと。

経費を引いた後に十分なお金が残らないこと。

休日が疲労回復だけで終わること。

 

これらは、会社の帳簿には直接表れにくい問題です。

会社が確認するのは、荷物が配達されたか、遅延がなかったか、苦情や事故がなかったかという結果です。

その結果を出すために、配達員がどれだけ無理をしたかは見えません。

もし一人の配達員が辞めても、別の人を募集できれば、仕組みは維持されます。

「未経験でも稼げる」

「車一台で独立できる」

「月収50万円以上も可能」

このような言葉で新しい人が入ってくれば、会社は低単価や長時間拘束を根本的に見直す必要がありません。

 

辞める人が多くても、採用を続けることで現場を回せるからです。

つまり、軽貨物という事業が続く理由の一つは、配達員が使い捨てられる前提でも、次の人が供給される仕組みがあることです。

新人は最初、土地勘がなく、配達速度も遅いため、十分な売上を作れません。

それでも車両費や燃料費はかかります。

仕事に慣れ、速くなった頃には、より多くの荷物を渡されます。

限界を感じて辞めれば、会社は「向いていなかった」「根性がなかった」と処理し、次の人を募集します。

 

これでは、配達員の技術や経験が、会社の長期的な資産として扱われていません。

本来、経験を積んだ配達員は貴重な存在です。

地域の道路、住所、顧客、危険な場所を知っており、新人より安全かつ効率的に配達できます。

それにもかかわらず、単価を上げたり、待遇を改善したりせず、辞めれば補充する運営を続けるのであれば、人材育成より短期的なコスト削減を優先していることになります。

低単価の軽貨物が存在するのは、配達という仕事の価値が低いからではありません。

その単価でも仕事を引き受ける個人へ、経費とリスクを転嫁できるからです。

そして、軽貨物が個人宅配を引き受けてくれる限り、自社のセールスドライバーを営業や集荷へ配置できます。

 

会社にとっては、固定費を抑えながら、社員には利益を生みやすい仕事をさせられる仕組みです。

その一方で、個人宅配の不在、再配達、長距離移動、駐車問題、時間指定といった負担は、軽貨物ドライバーへ集中します。

この仕組みで荷物が届き続ける限り、消費者も荷主も、配達の本当の費用を意識しません。

安い配送サービスの不足分は消えているのではありません。

配達員の長時間労働、車両費、疲労、生活の不安定さによって埋められているのです。

まとめ

 

軽貨物は、個人が車一台で始められる自由な仕事として紹介されます。

しかし、現在の仕組みを荷主や運送会社の立場から見ると、別の姿が見えてきます。

荷物量が変動しても、会社は大量の社員や車両を抱えなくてよい。

荷物が少ない日の売上減少は、配達員側が負担する。

車両、燃料、保険、整備費も個人負担にできる。

 

事故や交通違反が起きれば、運転者本人の責任として処理できる。

一方で、荷物、エリア、時間指定、作業方法は会社側が決める。

さらに、個人宅向けの宅配を軽貨物へ任せることで、自社のセールスドライバーを法人集荷、顧客管理、新規営業など、より利益を生みやすい業務へ集中させられます。

軽貨物ドライバーが細かい宅配、不在、再配達、時間指定を引き受けるからこそ、セールスドライバーは営業活動へ動けるのです。

 

つまり、軽貨物という事業形態は、配達員に自由を与えるためだけではありません。

運送会社が固定費とリスクを外部化し、自社社員を営業へ振り向けるために都合のよい仕組みになっている面があります。

もちろん、すべての軽貨物会社や業務委託契約が悪いわけではありません。

適正な単価が設定され、仕事を選ぶ自由があり、経費を引いて十分な利益が残るのであれば、個人事業として成立します。

しかし、会社員のように管理されながら、個人事業主として経費と責任だけを負わされるのであれば、それは自由な独立とは言えません。

 

また、軽貨物へ宅配を任せたことで会社側の営業効率が上がるのであれば、その利益を支える配達員にも、仕事の負担に見合った報酬を支払うべきです。

軽貨物という仕組みが存在する理由は、最後の一個を届けるために必要な費用とリスクを、会社がすべて自社で負担したくないからではないでしょうか。

そして、自社のセールスドライバーを、単なる配達ではなく営業へ使いたいからではないでしょうか。

私たちが安く、早く、便利に荷物を受け取れる背景には、その不足分を自分の時間、車、体力、生活で補っている配達員がいます。

軽貨物の問題を考えるとき、配達員が速いか遅いか、根性があるかないかだけを議論しても意味がありません。

問うべきなのは、なぜ企業が負うべき経費とリスクを個人へ移し、利益につながる業務だけを自社社員へ残すことで、この配送サービスが成立しているのかということです。

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