こんな方におすすめ
- 軽貨物や宅配の仕事を辞めようか悩んでいる人
- 毎回同じエリアで新人が辞めている現場の人
- 教育不足や情報共有不足に疑問を感じている配達員
軽貨物や宅配の現場では、新しく入った配達員が短期間で辞めることがあります。
数日で来なくなる人もいれば、数週間、数か月続けた後に限界を感じて辞める人もいます。
そのようなとき、運送会社や現場のベテランから出やすいのが、「最近の人は根性がない」「この仕事に向いていなかった」「覚悟が足りなかった」という言葉です。
確かに、軽貨物の仕事は簡単ではありません。
長時間の運転、荷物の積み込み、時間指定、不在、再配達、狭い道、分かりにくい住所、天候、顧客対応など、身体と精神の両方に負担がかかります。
ある程度の忍耐力や工夫が必要な仕事であることは事実です。
しかし、同じ会社や同じエリアで新人が次々に辞めているのであれば、本当にすべての原因が本人の根性不足なのでしょうか。
私は約5か月間、山口県の田舎や山側を含むエリアで軽貨物の仕事を経験しました。
自分自身が仕事を終えた今、改めて感じるのは、続けられない人を一方的に弱いと決めつけるだけでは、現場の問題は何も改善されないということです。
新人教育が不足している。
難しいエリアの情報が共有されない。
荷物量と単価が見合っていない。
拘束時間が長い。
車両費やガソリン代の負担が大きい。
こうした条件を放置したまま、辞めた人だけを批判する会社は、人を育てる気がないのではないでしょうか。
この記事では、配達員が辞めるたびに「根性がない」で片付ける会社の問題と、人が定着しない現場に共通する構造について考えます。
同じ現場で何人も辞めるなら、人より仕組みを疑うべきである
一人の配達員が辞めた場合、その人の体力、性格、生活事情、仕事への向き不向きが原因かもしれません。
しかし、同じ会社、同じ営業所、同じエリアで何人もの新人が短期間に辞めているのであれば、個人の問題だけでは説明できません。
そこには、人が続けにくい共通の条件が存在している可能性があります。
例えば、朝早くから荷物を積み、夜まで配達しても十分な利益が残らない。
新人なのに、住所の分かりにくい地域や狭い山道を任される。
配達方法を細かく教えられず、「やりながら覚えろ」と言われる。
難しい家や危険な道の情報が共有されていない。
荷物量が多すぎても、本人の段取り不足として扱われる。
こうした環境で人が辞めたとき、「根性がない」の一言で終わらせれば、会社は何も変える必要がありません。
辞めた人を弱い人間にすれば、荷物量も教育方法も報酬も見直さなくて済むからです。
しかし、その結果、次に入った新人も同じ場所で迷い、同じ荷物量に追われ、同じ理由で辞めていきます。
会社側は毎回、「今回の人も向いていなかった」と判断します。
これでは、組織としてまったく学習していません。
私が配達をしていた田舎や山側の地域では、単純な荷物数だけでは難易度を判断できませんでした。
一件ごとの移動距離が長く、ナビが正確に案内しない家もあり、細い道や入り方の分かりにくい場所もあります。
同じ80個でも、住宅が密集した地域と山間部では必要な時間が異なります。
それでも、配達数だけを見て「ほかの人はできている」と比較されれば、新人は自分の能力不足だと思いやすくなります。
しかし、その「ほかの人」は、すでに土地勘があり、家の位置や道を覚えている可能性があります。
何年も担当している人と、初めてその地域を走る新人を同じ基準で比較すること自体に無理があります。
人が続かない会社ほど、辞めた人の性格を分析する前に、共通して辞める原因を調べるべきです。
どのエリアで辞めているのか。
何週間目に辞める人が多いのか。
荷物量、拘束時間、経費、教育内容に問題はないか。
ここを確認しなければ、採用と退職を繰り返すだけになります。
新人を育てず、耐えられる人だけ残すのは教育ではない
軽貨物の現場では、教育期間が短いことがあります。
数日の同乗や簡単な説明を受けた後、すぐに一人でエリアを任されるケースもあります。
会社側としては、実際に配達しながら覚える方が早いと考えているのかもしれません。
確かに、配達は現場でなければ身につかないことが多い仕事です。
荷物の積み方、道路の選び方、車の止め方、端末操作、顧客対応などは、説明を聞くだけでは十分ではありません。
しかし、現場で覚えることと、何も教えずに放置することは別です。
新人が迷いやすい住所、進入してはいけない道、車を止めにくい家、同じ名字が多い地域など、過去の配達員が得た情報は会社側で共有できます。
積み方に問題があるなら、具体的な改善方法を教えられます。
時間指定の回り方や持ち戻り処理も、経験者が考え方を伝えることができます。
それをせずに、「最初は大変なのが当たり前」「自分で覚えろ」「みんな苦労した」と言うだけでは、新人教育とは呼べません。
会社が行っているのは、新人が成長できるように支援することではなく、厳しい条件に耐えられるかを試すことです。
続いた人だけを残し、辞めた人は向いていなかったことにする。
この方法は、会社側にとっては楽です。
一人ひとりに時間をかけて教える必要がなく、教育制度を整える必要もありません。
しかし、続いた人が優秀だったからといって、会社の教育が優れていたとは限りません。
その人自身が工夫し、失敗を繰り返し、何とか仕事を覚えただけかもしれません。
私自身も、田舎の配達でナビをそのまま信じず、周囲の地形や家の特徴を見ることを身につけました。
しかし、それは最初から体系的に教えられたというより、迷い、狭い道に入り、何度も失敗する中で覚えた部分が大きいものでした。
苦しい経験によって技術が身についたとしても、その苦しい状況を作った会社の教育が正しかったことにはなりません。
教育とは、苦労を与えることではありません。
不要な失敗を減らし、必要な技術を段階的に身につけさせることです。
辞めた人を責める会社は、残った人まで疲弊させる
新人が辞めると、その人が担当していた荷物は、残った配達員へ振り分けられます。
新しい人が入るまで、既存の配達員が応援に入り、荷物を分担しなければなりません。
つまり、離職率が高い会社では、辞める本人だけでなく、残った人にも負担がかかります。
残っている配達員は、自分の荷物に加えて新人の支援を行います。
配達が遅れれば応援へ向かい、住所を聞かれれば電話で説明し、持ち戻りが多ければ後処理にも関わります。
それでも会社が教育制度を改善せず、新人が辞めるたびに「根性がない」と言い続ければ、残った人も次第に疲れていきます。
ベテラン側も、「どうせすぐ辞めるから、真剣に教えても無駄だ」と考えるようになる可能性があります。
新人は十分に教えてもらえず、さらに辞めやすくなる。
辞める人が増え、残った人の負担が増える。
負担が増えた人も辞める。
この悪循環が始まります。
また、「辞める人は弱い」という文化がある会社では、現在働いている人も不満を言いにくくなります。
荷物量が多すぎる。
体調が悪い。
危険な道がある。
報酬が見合わない。
こうした問題を口にすると、自分も根性がない人間だと思われるのではないかと感じるからです。
その結果、配達員は無理を隠し、限界まで働きます。
会社は、不満の声が上がらないため、現場に問題はないと思い込みます。
そして、ある日突然配達員が辞めると、「何も言わずに辞めた」「責任感がない」と批判します。
しかし、不満を言えない空気を作っていたのは会社側です。
本当に人を定着させたいのであれば、辞める前に声を上げられる環境が必要です。
荷物量、エリア、報酬、拘束時間について相談でき、必要であれば調整する仕組みを作らなければなりません。
すべての要望に応えることはできなくても、問題を聞き、原因を確認するだけで改善できることはあります。
辞めた人を責め続ける会社は、次に辞める人を増やしているだけです。
まとめ
軽貨物や宅配の仕事には、体力、判断力、忍耐力が必要です。
誰にでも簡単に続けられる仕事ではなく、向き不向きがあることも事実です。
しかし、配達員が辞めるたびに「根性がない」「向いていなかった」で終わらせるだけでは、会社側の問題は何も見えません。
同じ営業所、同じエリア、同じ時期に新人が次々と辞めるのであれば、個人よりも先に仕組みを疑うべきです。
荷物量は適切だったのか。
新人教育は十分だったのか。
田舎や山側の難しさを考慮していたのか。
経費を引いた後に生活できるだけの利益が残っていたのか。
分からないことを相談できる環境があったのか。
これらを確認せず、辞めた人だけを責める会社は、人材を育てているのではありません。
耐えられる人が出てくるまで、新人を入れ替えているだけです。
私自身、約5か月間軽貨物を経験し、田舎配達への対応やナビに頼らない判断力などを身につけました。
しかし、仕事を辞めた今、苦しい状況を耐えたことと、その仕事を今後も続ける価値があることは別だと感じています。
辞めるという判断は、必ずしも逃げではありません。
拘束時間、収入、経費、健康、今後の人生を考えたうえで、割に合わない仕事から離れることも合理的な判断です。
人が辞めるたびに本人を責める会社は、自分たちの問題を見なくて済みます。
しかし、それでは次の人も同じ理由で辞めます。
本当に根性が足りないのは、厳しい現場から逃げた配達員ではありません。
人が辞め続ける原因と向き合わず、改善を避け続ける会社の方かもしれません。