本サイトの記事内に広告が含まれる場合があります。 軽貨物のリアル

「安全第一」と言いながら、終わらない荷物量を渡す運送会社の闇。

こんな方におすすめ

  • 毎日、終わらない荷物量に追われているドライバー
  • 軽貨物の仕事を始めようと考えている人
  • 事故や交通違反の責任を個人に押し付けられた人

運送会社や配送現場では、毎日のように「安全第一」という言葉が使われます。

事故を起こさないこと。無理な運転をしないこと。交通ルールを守ること。焦らず、確認を徹底すること。

どれも正しい話です。配達員として仕事をする以上、安全を軽視してよい理由はありません。

しかし、実際の現場では、その言葉と矛盾するような荷物量を渡されることがあります。

朝から車いっぱいに荷物を積み、時間指定を守りながら、住所の分かりにくい家、狭い道、山側の地域、不在や再配達にも対応する。

 

それでも決められた時間までにすべて終わらせることを求められます。

安全に走れば終わらない。

休憩を取れば遅れる。

分からない住所を慎重に確認すれば、配達件数が進まない。

駐車場所を探して遠くから歩けば、時間を失う。

このような状況を作っておきながら、事故や違反が起きた瞬間だけ「安全意識が足りない」「運転者本人の責任」と言われるのであれば、それは本当に安全第一なのでしょうか。

私は約5か月間、山口県の田舎や山側を含む地域で軽貨物の仕事を経験しました。

ナビが正しく目的地を示さない場所、一件ごとの距離が長い地域、狭い道、夜まで残る時間指定など、単純な荷物数だけでは測れない負担がありました。

その経験から感じたのは、配達員に安全運転を求めるのであれば、会社側も安全に終えられる荷物量を設定する責任があるということです。

この記事では、「安全第一」と言いながら終わらない荷物量を渡す運送会社の矛盾と、その結果として現場に何が起きるのかを考えます。

安全運転では終わらない荷物量を渡しておいて「急ぐな」は矛盾している

 

配達員に対して、会社は「急がなくてよい」「事故だけは起こすな」「必ず安全確認をしろ」と言います。

言葉だけを聞けば、非常に正しい指導です。

しかし、その一方で、朝から大量の荷物を積ませ、時間指定、不在、再配達、持ち戻りまで含めて、その日のうちに終わらせることを求めます。

配達員が安全を優先した結果、荷物が残れば、今度は「なぜ終わらなかったのか」「もっと効率よく回れなかったのか」と言われます。

ここに大きな矛盾があります。

本当に急がなくてよいのであれば、安全に配れる量だけを渡すべきです。

 

しかし現場では、普通に走り、正しく駐車し、住所や表札を確認し、休憩も取っていたら終わらない量が割り当てられることがあります。

すると配達員は、どこかで時間を削らなければなりません。

荷物を探す時間を短くする。

停車場所を慎重に選ぶ時間を削る。

玄関や表札の確認を急ぐ。

食事やトイレを後回しにする。

少しでも早く移動するために、運転が荒くなる。

会社が明確に「交通違反をしろ」と命令するわけではありません。

しかし、安全に終わらない仕事量を渡せば、配達員が自分の判断で無理をすることは予想できます。

会社側は「急げとは言っていない」と説明できるかもしれません。

 

それでも、決められた時間内に終えることを求め、遅れれば評価を下げるのであれば、実質的には急ぐことを要求しています。

私が担当した田舎や山側の地域では、一件ごとの距離が長く、住所どおりにナビが案内しない場所もありました。

都市部であれば近隣の家を連続して回れる荷物数でも、山側では同じ時間で配れません。

狭い道へ入る前には、安全に通れるかを確認する必要があります。

目的の家が分からなければ、表札や番地、周囲の建物を確認します。

こうした確認は、安全と誤配防止のために必要です。

しかし、荷物数だけで配達員の能力を判断する会社では、この確認時間が「遅さ」として扱われます。

安全第一とは、配達員へ掛け声をかけることではありません。

安全な手順で作業しても終えられる量を設定することです。

荷物量が多すぎる現場では、休憩・確認・駐車が最初に削られる

 

配達時間が足りなくなったとき、配達員が最初に削りやすいのは、自分の休憩です。

昼食を取らない。

トイレを我慢する。

飲み物だけで済ませる。

車を止めても、数分で次の配達へ向かう。

休憩を取れば、その分だけ終了時間が遅くなるためです。

しかし、長時間運転を続ければ、集中力は低下します。

疲労がたまれば、周囲を見る余裕がなくなり、確認ミスや判断ミスが増えます。

休憩を削ることは、仕事を早く終える方法に見えて、実際には事故や誤配のリスクを高めています。

 

次に削られるのが、確認作業です。

本来であれば、住所、名前、表札、置き配場所、荷物の個数などを丁寧に確認しなければなりません。

ところが、後ろに大量の荷物が残っていると、「おそらくこの家だろう」「前回もここだった」「写真を撮ったから大丈夫」と判断しやすくなります。

その結果、誤配や置き場所の間違いが起きます。

配達員の不注意と言えば、それまでかもしれません。

しかし、人が焦るような荷物量を継続的に与えているのであれば、会社側も原因の一部を作っています。

駐停車の判断も同じです。

安全な場所を探して車を止め、そこから歩けば時間がかかります。

家の前に数分だけ止めれば早く配れます。

その積み重ねによって、配達員は少しずつ危険な停車を選ぶようになります。

 

交通量の少ない田舎道であっても、見通しの悪いカーブ、狭い生活道路、坂道などでは、停車位置によって事故の危険が高まります。

山側の地域では、車を止められる平らな場所自体が少ないこともあります。

だからといって、危険な場所へ止めてよいわけではありません。

問題は、そうした道路条件が荷物量や配達時間へ十分に反映されていないことです。

会社側は、配達先ごとの駐車難易度や道路条件まで細かく把握していないことがあります。

荷物の個数だけを見て、「この程度なら終わる」と判断します。

しかし、一個の荷物に必要な時間は、配達先によって大きく違います。

玄関前に車を止められる家と、離れた場所から重い荷物を運ぶ家を同じ一個として計算することには無理があります。

時間指定が重なっている日、不在が多い地域、山側、雨天、繁忙期では、同じ個数でも負担はまったく異なります。

安全第一を本気で掲げるのであれば、荷物数だけではなく、道路、距離、駐車、重量、時間指定まで含めて業務量を考える必要があります。

事故が起きた瞬間だけ「配達員の責任」にする会社

 

配達中に事故や交通違反が起きれば、実際に運転していた配達員の責任が問われます。

ハンドルを握り、停車場所を決め、速度を選んだのは本人だからです。

配達が忙しかったことや荷物が多かったことだけで、事故や違反が正当化されるわけではありません。

しかし、それを理由に、会社側の業務設計が一切問題にならないと考えるのも不自然です。

毎日長時間働かせ、休憩を取りにくい量を渡し、遅れれば責める。

事故が起きた瞬間だけ、「会社は安全運転を指導していた」「本人が勝手に急いだ」と説明する。

これでは、安全に関する利益は会社が受け取り、リスクだけを配達員へ押し付ける構造になります。

 

軽貨物では、配達員が個人事業主や業務委託として働くことが多くあります。

会社側は、時間、エリア、荷物、再配達などを実質的に管理しながら、事故、違反、車両修理、燃料費などは本人負担とすることがあります。

自由に見えて、仕事の進め方には多くの制約があります。

それでも問題が起きれば、個人事業主だから自己責任だと言われます。

会社が本当に安全を重視しているかどうかは、事故後の言葉ではなく、事故前の仕組みを見れば分かります。

新人へいきなり大量の荷物を渡していないか。

難しいエリアの荷物量を調整しているか。

休憩を取れる前提で時間を組んでいるか。

夜遅くまで残る場合に応援を出しているか。

事故やヒヤリハットの情報を共有しているか。

危険な配達先や道路の情報を蓄積しているか。

 

これらを行わず、「安全第一」と書かれた紙を貼るだけでは、安全管理とは言えません。

また、配達員が「この量は安全に終えられない」と伝えたときの会社の対応も重要です。

本人の能力不足として片付けるのか。

実際の走行距離や配達条件を確認するのか。

一時的に荷物を減らすのか。

ほかの配達員と比較するだけなのか。

現場の訴えを聞かず、事故が起きてから本人を責めるのであれば、会社は安全より配達完了を優先していたことになります。

安全第一とは、配達員に責任を自覚させる言葉ではありません。

会社側も、売上や荷物量より安全を優先する覚悟を持つという意味でなければなりません。

まとめ

 

運送会社が「安全第一」を掲げること自体は正しいことです。

配達員も、荷物が多いことや時間が足りないことを理由に、危険運転や交通違反をしてはいけません。

事故が起きれば、無関係な歩行者や道路利用者を巻き込む可能性があります。

 

しかし、安全を求めるのであれば、会社側も安全に終えられる仕事量を設定する必要があります。

普通に運転し、正しい場所へ駐車し、住所や表札を確認し、休憩を取りながら働いたら終わらない。

そのような荷物量を渡しておきながら、「急ぐな」「事故を起こすな」「荷物はすべて終わらせろ」と求めるのは矛盾しています。

現場で時間が足りなくなれば、休憩、確認、駐停車の安全性が削られます。

配達員自身が選んだ行動であっても、その選択を繰り返し迫る業務設計には、会社側の責任があります。

本当に安全を優先する会社であれば、荷物数だけではなく、走行距離、道路の狭さ、駐車環境、荷物の重量、時間指定、不在率などを含めて仕事量を決めるはずです。

 

配達員から「この量では安全に終えられない」と報告があれば、能力不足と決めつけるのではなく、現場を確認する必要があります。

事故が起きた後に配達員を責めるのは簡単です。

しかし、事故が起きる前に荷物量を減らすことは、売上や人員配置に影響します。

その不利益を会社側が引き受けられるかどうかに、本当の安全意識が表れます。

「安全第一」とは、配達員だけが守る標語ではありません。

会社が利益や配達件数よりも、安全に終えられる仕事量を優先するという約束であるべきです。

-軽貨物のリアル